学校などの狭いコミュニティでは【空気】感に敏感になり流されやすい環境にある。自分が思っていたことと違っていたとしても、空気に流され同調したことが一度や二度経験したことがあるのではないか。
千葉県の高校2年生の女子生徒は1度友達との誘いを断っただけで7人グループから無視された。シンガー・ソングライターの吉澤嘉代子さん(29)彼女の歌詞には独特の言い回しや表現が多く散りばめられている。自身を「筋金入りの不登校」といい、小さい頃から集団に馴染めず小学校5年生から中学3年生まで学校に行けなかった。歌詞には自身が見聞きした体験したことが元になっている。
【空気】とはなんだろう。昨年、中・高生に向け、『「空気」を読んでも従わない』(岩波ジュニア新書)を出した劇作家の鴻上尚史さん。日本はそもそも農耕社会であり、かつ島国で、異文化に侵略されてないため同調圧力が強くなった。今でもご近所さんとの付き合いなどを気にする世間体という言葉があり、自分と関わりある人との関係を壊さないように生活している。世間という集合体で生きた日本人が、明治維新がきっかけとなりこれまで「世間」で生きてきた環境から、一気に「社会」へと広がった。しかし、何百年と続いた「世間」は中途半端に残り、日常の様々な場面で現れる。その名残が「空気」だ。経済が成長しているときや右肩あがりの時はエネルギーは外に向かい、経済的に不安になったり落ち込んでいるときこそ同調圧力すなわち【絆】というものが強くなる。
一方、世界では#MeToo、LGBTQといった言葉が広がり個人の自由や権利を拡大し、保障する方向に進んでいる。学生には学校という一つの世間だけでなく、自身の好きな趣味などから自分らしくいられる居場所があれば生きやすくなる。
昨年12月、東京の高校1年伊藤伽歩さん(16)はメンズ地下アイドルだ。中学生のころ周りのことばかりきにしていて自分らしさを出せていなかった。SNSをきっかけに憧れの歌い手さんのライブにいき人生観が変わった。自身が変わったことで憧れだった人が目指す人に変わった。メンズ地下アイドルに関わらず、発信側は意図がなくても受け取る側に勇気を与えていて受け取る側もまた誰かに勇気を与えている。それが周りに流されずに生きる力になる。中学生のころ、「自分の発言がどうとられるかが気になって仕方なかった」。周りに同調しかできなかったある日、ニコニコ動画などに自身が歌う動画を投稿する「歌い手」のライブに行った。「明るくて活発な」歌い手にあこがれ、自分もなったつもりで過ごすと、人と話すのが苦ではなくなった。ツイッターで「推し」が同じ同志との交流が生まれた。「大好きな『推し』に見合う人間になりたいと思った」。合わせるだけではない自分になっていた。
メンズ地下アイドルや歌い手に限らない。俳優、お笑い芸人……。ときに身近にふれあい、あこがれを抱く存在は、発信側の意図にかかわらず、受け取る自分自身が思い描く姿となる。それが周りに流されずに生きる力になる。
「人に合わせる人生は、むなしくないですか?」と問いかけるのは、数々の合わせない人を描いてきた脚本家の遊川和彦さん。
先月まで放送された日テレ系ドラマ「同期のサクラ」と3月公開の映画「弥生、三月」の2人の主人公は空気を読めず、バカ正直に突き進み、忖度(そんたく)知らずで周りとぶつかる。
自分自身を信じ自分らしく人生を進むことによって豊かな未来があるということを覚えておいてほしい。空気を気にせず、自分らしく個性を大事に。
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